梅雨が明け、間もないとあ、週末。
うだるような暑さを逃れるように、上伊佐野方面へ車を走らせました。
県道30号線から郷土資料館へ続く道にそれ、さらに北に。北に。内川の橋を渡ると、いつも遠くから仰ぎ見ていた高原山の稜線が間近に迫って思わず「おおっ」と声を上げてしまいました。
気がつくと農道の両脇の田んぼをこんもりした森が取り囲み、静かでのどかな里山の風景が広がっていました。
目的地である山縣有朋記念館はそんな風景に溶け込むように佇んでいました。
建物の周りには木々がたくさん立ち並び、木漏れ日が暑さを忘れさせてくれます。
竹が風に揺らぐのを眺めたり、水路から水の流れる音に耳を澄ますのもまた楽し。
足元に咲く二輪草の可愛らしさに心が和みます。
周りの風景と庭にすっかり心奪われてしまいました。
記念館は青と白を基調とした明治の木造洋館。伊東忠太が明治42年に設計したそうです。
元は小田原の別邸だった「古稀庵」に建てられたものですが、大正12年の関東大震災を機に有朋の嫡男伊三郎が移築。
栃木県有形文化財(建築)であり、2018年には山縣農場とともに記念館が日本遺産に登録されました。
当時日本を動かした人達が集まる場所だったこともあり、重厚感もありますが、どことなく寛げる雰囲気があるのは、ここが別荘だったからでしょうか。
さっき楽しんだ里山の風景を、白枠の窓から眺めるのはまた違った味わいがありますね。
展示品は山縣有朋が実際に愛用した物や、皇族からの拝領品の他、開墾時の様子が分かる資料も並び、見応えがあります。
中でも明治25年より山縣有朋農場の管理人だった森勝蔵が書いた『伊佐野農場図稿』は、伊佐野地区の当時の風景や農作業の様子、暮らしぶりが闊達に描かれ、とても面白い資料でした。
見学の後はコーヒーのサービスがあり、庭を眺めながら当時の風景に思いを馳せることができました。
静かでゆったりした時間となりました。